静かな雨 ~何かが起きるわけではないし、解決するわけでもない~【感想】
【タイトル】静かな雨 日2020
【監督】中川龍太郎
【出演】仲野太賀、衛藤美彩
【一言あらすじ】たいやきを食べたくなる話。
久しぶりに邦画を鑑賞したよ。
仲野太賀が主演。イイ。好きな俳優さんです。
評価
★★★☆☆(★3.0):すんげー好きなんですけどね。
題材とか映画の雰囲気、音楽、めっちゃ良かった。良かったんだけど、主演二人の生活の表面しかなぞってないので、映画への没入感が少なかった。
せっかく雰囲気のある二人なのに、もっともっと深く見せてくれ!!!って気持ちが沸いてくる。褒めてもいるし、物足りなさの表れでもある。
シナリオ的には幸せを感じれるシーンって少ないんですよ。
かと言って絶望が充満している訳でもない。
でも、たぶん二人の置かれている状況ってのは暗いと思うんですよね。
なぜか幸せを感じれる二人の演技をもっと観たかったし、もっと感じたかった。
絶望や葛藤だって一緒に味わいたかったし、暗さも明るさも、もっと映してほしかったわけですよ。
まぁ、原作があるから、どのくらい再現しているかにもよるし、どのくらい映画用の脚本に直したかにもよるんだけどさ。
褒めてばかりだけど、かなり静かな映画で退屈しないギリギリだった。自分が仲野太賀のことを好きだからなんとかなったんだと思う。いわゆるミニシアター系の仕上がりの映画だからそのあたりはかなり好みが分かれそう。
演者は静かだけど、音楽が不釣り合いなぐらいの音量のところもあった
もちろんイイ音楽なんだけど、少し演者の台詞が聞き取りにくい部分もあったかな。
あらすじ
足の不自由な行助、たいやき屋を営むこよみ。
行助がこよみに電話番号を書いた紙を渡すも、鳴った電話は彼女の事故の知らせであった。こよみは事故の後遺症で新しい記憶を覚えておくことができなくなってしまう。
あまり広い世界の話ではないです。登場人物も少ないですし、時間経過もそれほどないです。ただ、この映画における「世界」ってのはちょっとだけ重要なキーワードになっている。たぶん、映画の中の世界の広さが彼らの世界の広さになるんだろうな。行助の世界、こよみの世界。
それが良いのかどうかは分からないけども。
上の方で二人の生活の表面しか映されないことに触れたんだけど
作中、二人は恋人らしいことをしないんですよ。
せいぜい、並んでたいやき食べたり、焼いも食べたり
最後に少しケンカみたいになるんですけど、そこに一番人間味を感じてグッと来たんすよね。
とはいえ、こよみが記憶を保持している部分では、付き合ってなかったし
事故にあってからは記憶の保持ができないから付き合う云々の話ができないってことなんかね?
最後にもうひと殴り
もうすでに書き殴ってるんだけど、やっぱり心に残るセリフとかを書き残しておきたいですよね。
こよみの記憶が次の日まで持たないから、昨日食べた焼いものことも忘れてるんですよ。
次の日の寝る間際に
行助「昨日食べた焼いもおいしかったんだよ、また食べようね」の言葉。良かった。
もっと言うなら、行助が話した「はさみが一つないザリガニの話」なんかも足を引きずっている行助が話すからグッとくるし
元彼のことは記憶にあるのに、今からの自分との思い出は積み重なっていかない虚無感。彼女の世界に自分が存在しているのか、苦悩に胸が締め付けられる。
それなのに、映画を観ている僕は幸せなのです。
こよみが話したリスの話も良かった。
露骨っちゃ露骨な伏線ではある。
それを踏まえての、色んなところに「ユキさんブロッコリーは嫌い」のメモを貼っているのは切なさがあるよ。
2021.03.22