タクシー運転手 約束は海を越えて ~光州事件に関する映画です。とても勉強になりました。~
【タイトル】タクシー運転手 約束は海を越えて 韓2017
【監督】チャン・フン
【出演】ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン
【一言あらすじ】タクシー運転手とドイツ人記者の話
邦画のストックがどうとか前回の記事で言っておきながら海外映画を観ました。やっぱり邦画って観ようとするまでに時間がかかるんですよね。僕のブログでは恐らく初の韓国映画です。韓国映画をたくさん観る訳ではないですが、「猟奇的な彼女」とか好きですよ。有名すぎるし、コメディだし、そもそも古いし、具体的なタイトルが1つしか出てこないのは許してください。笑
今回の映画は実話を基に再構築した映画です。ヒューマンな実話ではなく、社会的な実話です。
評価
★★★★☆(★4.0):★以上の価値があった。
この映画を観るまで「光州事件」の存在を知りませんでした。知らなかったことを知るキッカケとして映画ってのは良いですよね。作る側の立場や映画の視点などで実際に起こった出来事の見える側面ってのは変わってくる可能性もありますが、まずは「知る」ということが大事な気もします。
この映画は1980年に韓国で起こった「光州事件」を題材にしています。つい40年ほど前に起こっていた出来事とは思えないような内容で、驚きました。
あらすじとあらまし
映画のあらすじ
妻に先立たれて、男手一つで娘を育てているタクシー運転手のキム・マンソプ(ソン・ガンホ)は高額の運賃を払ってくれるというのを聞きつけ、ドイツ人記者のピーター(トーマス・クレッチマン)を光州に送り届けることにした。光州への道は軍によって封鎖されており引き返そうとするが、報酬のためキムはなんとか光州へ。しかし、光州では思いもよらない事件が起こっていた。
光州事件のあらまし
軍事政権をしようする軍のクーデター vs 民主化を望む学生・市民デモ、という構図
よくある話と言えばそうなんだろうけど、軍側の武器による制圧があまりに残酷であり、また軍は報道規制を行っており事件がすぐに明るみにならなかったのがスゴイよね。
もっと詳しく光州事件について知りたい人は自分で調べてみてください。僕にはこれ以上、上手に説明できる自信がないし。
この映画の1番良いところはソウルの人とドイツ人を主人公に置いたところ。光州事件の当事者目線ではなく外部の目線で映画を作ることによって、光州事件を知らなかった自分でも自然に事件への興味を持つことができたし、没入感が良かった。
感想
まず、事件のことを知れたのが良かった。映画を通じて勉強になったのは収穫がありました。
映画の良かったところは主人公の心の動きがシンプルに伝わるところ。ノリノリで家族思いで、貧乏で、優しくて、少しずる賢くて、というのが短い時間でストレートに表現されている。光州に行くまえの性格のライトさが日常感を演出していて、光州に入って、シリアスな展開になっていくと同時にソン・ガンホの感情にも変化が起こっていく。それに誘導されて観ている観客も光州事件に向き合うことができるのは素晴らしい。日本に住んでいる僕でこうなんだから、韓国の方が観たらもっと衝撃的で惹きこまれていくんじゃないかな。
悪かったところは光州事件の背景が伝わりにくかった。もっと歴史的に韓国を知っていれば良かったんだろうけど、勉強不足で申し訳ない。
クーデターを起こした理由や学生市民デモが起こるまでの数日間が欲しかった。映画の中の日にちの動き的に5月20日(もしくは前後か、それ以降)からの描写になるんだけど、ほぼ事件が起こったタイミングなんだよね。
もう少し、報道規制されるタイミング、もっと言うならばピーターが韓国入りしなきゃいけなくなった背景などの描写が欲しかった。
あとはソン・ガンホの演技にやられました。
最初の、のらりくらり感からの光州での光景を目の当たりにしたあとの韓国人としての心の変化、そして娘を想う気持ち、祖国を想う気持ちを演技で表現するのは痺れた。
「戦争」という言葉を使うには小さい争いなのかもしれませんが、こういうのが大きな戦争に繋がっていくと考えると怖いですね。特にたった40年ぐらい前の話です。軍が暴力で市民を制圧しようとしていた事実は知れましたが、その背景はどうだったんだろうか。
どちらも自分が正義だと思って争いを起こしているのかもしれないし、勝った方が正義なのかもしれませんね。
まぁ、この光州事件に関して言えば、さすが1980年代の話なので、遅かれ早かれ情報が韓国のみならず、世界に向けて発信されただろうけど、それでも作中のソウルのタクシー運転手とドイツ人の記者は偉大な仕事を遂行したのがスゴイね。
光州事件が終息した後、ドイツ人記者はタクシー運転手を探そうとしたけど、最後まで会えずに亡くなったらしいです。
そのへんも調べたらすぐに出る内容だと思いますので、気になる方は調べてみてください。
鑑賞:2019.06.05