そこのみにて光輝く ~「そこ」と「底」のダブル・ミーニング~
【タイトル】そこのみにて光輝く 日2014
【監督】呉美保
【内容】あることをきっかけに仕事を辞めてしまった達夫(綾野剛)は酒とパチンコ三昧の毎日を過ごしていた。そんなある日、パチンコ屋で拓児(菅田将暉)にライターをあげたお礼に拓児の家に招待された達夫は拓児の姉である千夏(池脇千鶴)に会い、次第に二人は惹かれていく...
【キャッチコピー】「愛を捨てた男と愛を諦めた女。函館の一瞬の夏を舞台に、二つの魂が邂逅する。」
感想・軽いネタバレ
久しぶりに「面白い!」と思える邦画に出会いました!
なによりも、メイン3人の演技が良いです!
綾野剛のだるーい感じと鬼気迫る感じのメリハリのある演技
池脇千鶴の悲壮感のある顔とリアルな肉体、「仕方ないでしょ」感の演技
菅田将暉の元気でヤンチャな演技と後半の沸々と湧き上がる怒りの演技
素晴らしかったです。
最初は淡々と物語が進んでいく淡々映画(勝手な名称)かな?って思ってました。
どうにもこうにも、その手の映画は苦手なのですが、この映画は淡々映画ではありませんでした。なんか、ダウナー映画(観ると落ち込むような映画のことらしい)って言われることが多い本作品みたいだけど、個人的にはそんなことはありませんでした。
ストーリーも分かりやすく、不要なシーンもあまりない気がしました。それでも120分は尺の取りすぎかな?って感じもしますが...。
さて、本編の話に入ります。
主人公である達夫は拓児家に招かれるのですが、そこは海辺近くにあるバラック小屋で絵に描いたような貧乏な生活でした。
病気で寝たきりの父、仕事もせずそんな父を家に置いてパチンコする母、家族のために昼は水産工場で働き、夜は自分の体を売る姉の千夏、傷害事件の保護観察中の拓児の4人家族というどん“底”のような暮らしをしています。
そんな中、達夫と千夏は心惹かれていきます。唇を重ね、体を重ねます。
ただ、千夏が置かれている環境は酷いものでした。一番印象に残った鬱シーンは千夏が父の性処理をしているところに達夫が遭遇するシーンでしょうか。他にも鬱シーンはいくつかあるのですが、それは映画を観てもらうとして、とにもかくにも千夏を取り巻く環境は良くないです。
最後はパーフェクトなハッピーエンドではないですが、それでもなんとなく幸せな何かが「そこ」にはあります。そんな映画です。
達夫と千夏が海の中で抱き合うシーン
達夫と拓児がともに歩くシーン
上記の鬱シーン
ラストの達夫と千夏の朝焼けのシーン
など、良い場面が多い映画でした。
池脇千鶴さんの濡れ場がいくつかあるのですが、そのときに見れる肉体が素晴らしいです。グラマラスだとかそういうことではなく、リアルな肉感があり、それこそがこの映画のキモである「そこ」のみにて光輝くを表している気がします。
他の女優さんでは出せない魅力があります。
欠点としてはキャッチコピーでしょうか。
愛を捨てた男と愛を諦めた女。
男→達夫
女→千夏
だとは思うのですが、千夏は確かに愛を諦めていると思います
だ、達夫は愛を捨てたのかな?って思います。そこはちょっとだけ不満。
つまり、達夫の掘り下げが足りないのか?ってことなのか。うーん。
まぁ、キャッチコピーに文句言ってもしゃーないけどもね。
舞台が北海道なので、登場人物は「~だべ」「~っしょ」のような言葉遣いなのですが、それがすごく良い方向に働いていて見やすい、聞きやすい映画に仕上がっています。
調べて見たら数多くの賞も受賞しているようです。
綾野剛はドラマ俳優のイメージで、見たことのある主演映画をあまり思い出せません。
最近では「ピース オブ ケイク」が気になってます。
菅田将暉さんは今注目している俳優さんの一人です。すごく良いですよね。個人的には菅田将暉と池松壮亮は他の俳優さんとは一味違うなと思ってます。
少し傾向を変えると染谷将太とか好きだな~。
話が逸れてしまった。
菅田将暉さんは「共喰い」がオススメです。これまた菅田将暉の良さが光る映画になってます。
試聴:2015.10.16