【タイトル】岬の兄妹 2019日
【監督】片山慎三
【出演】松浦祐也、和田光沙
【一言あらすじ】足が不自由な兄と自閉症の妹の話。
今日は「岬の兄妹」という映画の感想を書いていこうと思う。
結構、衝撃的な映画でして、人によってはあらすじを読んだ時点で観るのを躊躇ったりするかもしれないね。
感想の内容にも性的表現が多かったりするので、苦手な方は気を付けてください。
評価
★★★★☆(★4.0):ありきたりじゃないありきたりな映画。
ここ最近の邦画って、「貧困」をテーマにした作品が多いと思うんですよね。
というか、世間的に評価されやすいテーマなので、そのため目にすることが多くなっているかもしれない。特に「万引き家族」がヒットしたから、そう思うのかも。
この映画は「万引き家族」以上に「貧困」の度合いがすごい(語彙力)。
「万引き家族」の方は、貧しいけれど、心に余裕がある方なんだよね。なんというか、人を殺す殺さないって話まではいかないし、本当の家族じゃないからこそ家族を続けれて、いざとなれば家族じゃなくなればいい。
もっと言うならば、彼らは割と「万引き家族」な生活を楽しんでいる節があった。
でも、「岬の兄妹」の生活は凄まじい。
その凄まじさが観ていて、ヒリヒリとした気持ちにさせてくれる。
「あぁ、日本にはこういう生活をしている人がいるんだろうな」という想像が簡単にできてしまう。
そして重要なのは、普段はイメージしてないけど、映画を観ていると簡単に想像できるところ。
あらすじ
ある港町で自閉症の妹・真理子とふたり暮らしをしている良夫。仕事を解雇されて生活に困った良夫は真理子に売春をさせて生計を立てようとする。良夫は金銭のために男に妹の身体を斡旋する行為に罪の意識を感じながらも、これまで知ることがなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れることで、複雑な心境にいたる。そんな中、妹の心と体には少しずつ変化が起き始め……。(映画.com)
まぁ、あらすじだけ読むと「ただの屑な兄の話じゃねーか」ってなるんだけど、それは綺麗事と言うか、安定した生活をしている人からの意見であって、当の本人たちはそれしか生きる道はない、と思っているのかもしれなくて。
本筋は重くて社会的なメッセージが強そうな映画のような気がするけど、実際はそこまで重い訳ではない。いや、重い映画ではあるけど、思ってたより軽いって感じ。
その要因は、ところどころにコメディタッチな台詞や演技があるからで、少しだけ観やすくなってる。
あとは短めの尺なのが生きている。
印象に残りやすいシーンも多くて、良かった。
段ボールを剥ぐシーン、チンピラとのSEX、糞、ふにゃふにゃチンチンなど。
とはいえ気になるところもある訳よ
この2人は障害があるので、もう少し手厚い社会保障を受けれる気がするんだけど、どうなのだろうか?
障害者手帳を貰ったり、障害者雇用を利用したり、もう少し必死になれる部分があったんじゃないかなと思う。
日本の行政がどこまで機能しているか分からないのだけど、急に売春行為の斡旋を始めるよりは、色々ともがいた結果行き着いた方がどん底感が出るし、個人的にはその方が暗い気持ちになれたのかなと思う。
まとめ
まずは主演の2人の好演が良かった。
兄役:松浦祐也の自分より上の人間には媚びへつらい、下の人間には高いところから物を言う感じ。コメディな部分と人間の嫌な部分を出すときの差を表現できる俳優さんだと思った。
妹役:和田光沙の自閉症の演技はそれっぽく見える。そういう方と接したことがないので比較はできないから、なんとも言えない部分ではあるけど、上手だなと思った。と、同時にそういう意味ではステレオタイプの演技になっていたのかもしれない。でも、個人的にはそんなに違和感なく観れた。
性行為のシーンはいくつかあるが、下着に精子が付いていたり、クンニをしているシーンがあったり、どれも生々しい仕上がりになっていて、良かった。
妻に先立たれた爺さん、小人症の男、童貞の高校生などがいたけど、そのいずれもテイストが違って悪くなかった。
さっき言ったように、行政を頼れなかったのかは疑問だけど
自閉症の妹に売春行為をさせなければいけないほどの貧困に陥った兄妹がいて
それを単に「犯罪だから止めろ」って言うのは簡単ではある。
貧困に関する社会的問題に焦点を当ててはいるものの
監督からのメッセージは特にはなく、観客に丸投げさせるような作りになっている。
そのへんは少し雑かも。
映画『岬の兄妹』コメント予告【2019年3月1日(金)全国公開】
鑑賞:2020.06.04